不思議な家のアリス
私をベッドのふちに座らせて、自分は私の正面の床に座り込む秋夜。
「どーした?いじめられたか。Mなのにいじめられて嫌だったのか。」
大きな手で頭を撫でて、あやすように、ちょっと茶化しながら慰めてくれるその顔は、いつものバカな秋夜じゃない、柔らかくて優しい笑顔。
答えようにも、今のこの気持ちを言葉でどう表現すれば良いのか分からなかったし、嗚咽が酷くて声にならない。
「言いたくねぇか?それとも何で泣いてるか自分でもわかんねぇか?」
小さく頷くと、秋夜は私の隣に座って、体育座りするみたいに横向きで抱き締めてくれた。
優しく、優しく頭を撫でながら。
―私が何で泣いてるか。
自分でも本当に良く分からなかった。
あちこちから向けられた同情や、好奇の視線。
行き場の無い虚しさと喪失感。それと少しの憤りが涙になって出ただけだった。
「…大丈夫だよ、お前は一人じゃねぇし、今は興味本意であることないこと言ってる奴等もすぐ飽きるから。」
何も言わなくても、秋夜は全部分かってるみたいだった。
孤独になった人間が、周りからどんな目で見られるか。
哀れみの目が、どんなに痛いものなのか。
もしかしたらこのやりきれない気持ちを、彼も味わった事が有るのかもしれない。