不思議な家のアリス


―居間のテーブルには、人参・玉ねぎ・ジャガイモ・牛肉…等が置いてあった。


なるほど、カレーだな。





カレールウが無かったので戸棚を探ると、甘口のカレールウが大量に出てきた。



辛口が好きな私は、奥まで探してみるがやっぱり甘口しかない。



「秋夜、この家辛口のルウは無いの?」

「無い。俺甘口しか食えねーもん。」





いい年こいて何が"もん"だよυ

てか甘口しか食べれないって…ぷぷっ。




「お子ちゃま。」





からかって言うと、意外にも秋夜からの反論は無かった。



振り向くと、何だか物憂げに空虚を眺めている。



"お子ちゃま"って言われたのが、そんなにショックなの?



良く分かんないけどほっといて、さっさと作ろ。




具を炒めて水をさし、ルウを入れる。





「なぁ、バーベキューしねぇ?」



一人言の様に、秋夜がポツリと呟いた。





「…は?」



「バーベキュー。」



声を大きくする秋夜。

いや、聞こえたけどさ。



「私、今カレー作ってんだけど?」


「見りゃ分かる。」



「ですよね?あ、今度?今度したいって事?」


「今に決まってんだろ?よし、肉買って来い。肉。」



え、なにこの人?

私アンタに言われてカレー作ってんだけど?

しかも、アンタの好きだと言う甘口のカレーを。




あまりに突然の事で、私が固まっていると、秋夜が財布から二枚諭吉を取り出した。



「ビールを2ケースと、旨そうな肉と野菜適当に買ってこい。あ、ピーマンはいらねぇから」



え、ほんと何この人?

ビール2ケースなんて私が持てると思ってんの?




固まる私に秋夜は、「あ、あと炭もな。」と言ってもう一枚諭吉を握らせた。


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