今日の・・・
「大丈夫だよ、翔君。お母さんが翔君のこと、ちゃんと守ってくれるよ」
私は翔君に目を合わせて言った。
「私、何もできませんが・・・・」
「いえいえ、とんでもない。母は強し、ですね、ホンマ」
「あっちゃん、ちゃんと説明してよ」
千秋ちゃんが痺れを切らしたように言った。
「寝室で、見たことあるって言ってましたよね?」
「はい・・・。主人がいない夜で、翔と二人で寝ているときに。酷い金縛りの後、目の前にぬっと男の顔が現われたんです。最初は私の顔を見ていたんですけど・・・」
「その後、翔君に何かするんじゃないかと思ったんですよね」
「そうです・・・」
恵子さんは少し驚いたように言った。
「睨んだでしょ、幽霊に向かって」
私はニッコリして言った。恵子さんは少し緊張が解けたように、息をフッと吐いた。
「睨んだなんてそんな・・・。怖くて動けなかっただけです。・・・でも、とにかく翔は守らないと思って。生きてるものでも死んでるものでもこの子に何かしたら、許さないって咄嗟に思いましたけど」
「凄いね~!!」
千秋ちゃんが言った。
「それですよ。この男の人、ほんっまに気が弱くて。だから死ぬにしても睡眠薬だったんですね、きっと。死ぬ勇気はあるのに痛い思いや苦しい思いはしたくなくて薬に頼ったみたい。恵子さんに睨まれてびっくりして、なんだか直接手を出せなくなってしまった。行き場もないし、それなりに思い出のあるこの家に留まってます。自殺なんていいことな~んにもないのに」
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