今日の・・・
「じゃぁ、この先も見えるのは私だけ?」
「そうですね・・・。慣れて下さいとも言えないし、決していい状況と言うわけではないのでとりあえず、旦那様にも見てもらいましょう」
「そんなことできるんですか?」
「まぁ。企業秘密って程ではないんですけど、簡単に言うと、旦那様に見えないものも見える”代わりの目”みたいなモノをつけます。一瞬ね」
「はぁ・・・!」
「ちょっと待ってて下さいね」
私は鞄からいつもの数珠を出すと、テーブルの上に丸く置いた。
「しばらくお静かに」
私はそう言うと、手を合わせ、聞こえるかどうかの小さな声で”特別な”経を唱えた。しばらくすると、円になった数珠の中からひょっこりと小さな猫が顔を出した。
「にゃぁ~」
白い手のひらに乗りそうなほどの猫はひょいっと軽く飛び出し、私の目の前に座った。その小さな猫は尻尾が3つに分かれている。
「久しぶり」
「にゃぁ~」
「頼むね。目になってあげて」
「にゃぁ~」
この猫、3年ほど前に偶然出来た仲間。可愛そうに生まれてまもなく、車に轢かれて瀕死のところを見かけてしまって、助からないな、と思った私はその猫の魂を抜いた。なんとなく、ビビッと来たものがあったのだ。しばらく私の周りをちょろちょろしていてたがある日、ふっと消えた。可愛かったし、なついていたのでちょっと寂しかったのだが、2、3ヶ月後に突然戻ってきた。その時には尻尾が2本になっていた。近くの神社の狛犬と仲良くなって、一緒に神様の元で暮らし、その間に色々身につけたようだ。・・・そう言う事もあるのかとかなりびっくりしたけど、それ以来、たまにちょっとした用事を頼んだり、助けてもらったりする。まだ子猫だし、成長過程だから無理は言えないけど。
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