今日の・・・
シロ(私が名付けた)はクルリと翻り、数珠の円に消えた。

 「・・・あっちゃん?」
千秋ちゃんが心配そうに小さな声で私に話しかけた。
「はい、これでオッケ~」
「誰と話してたの?」
「あのね、にゃぁんがいたよ、ちっちゃいの、こ~んな」
翔君が小さな手で丸を作って興奮気味に言った。
「わ、翔君には見えたんだ!」
私はちょっと驚いて言った。
「猫?」
千秋ちゃんと恵子さんは声をそろえた。
「そ。ちょっとお使い頼んだねん。多分近々、旦那さんからも驚きの報告があると思いますよ」
「また、パワーアップ?」
「すごいですね・・・・」
「それよりも、あのおっさん・・・」
私は立ち上がると、少しだけ開いているリビングのドアに近寄った。
「あ、逃げた!」
さっきから私たちの様子をドアの隙間からこそこそ見ていた張本人は、私が近づくとまた消えてしまった。
「どんだけ気ぃ弱いねん・・・。幽霊のくせに・・・」
私はソファに戻り、腰をかけた。
「やっぱり、いましたよね?姿が見えるわけではないんですけど、私もずっと気になってたんです・・・」
恵子さんは身震いして言った。
「悪さはしないと思うんですが、まだこの家にいるのは確かなので、とりあえずこれを・・・」
私は鞄から清めの塩を包んだ小さな紙包みを出すと恵子さんに渡した。
「常に持っておいて下さい。見えることもないと思います」



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