今日の・・・
 12月10日
 すっかり寒くなってきた。今日は、外の寒さに負けないくらい、久々に背筋の凍るようなことがあった。午前中最後の授業の教室で夕実に会ったのだけど、これがまた青い顔をして、どうしたのかと思うような様子だった。
 授業に少し遅れてやって来た夕実は、一番後ろの席に座っていた私の横にそっと腰掛けた。
「珍しいな、夕実が遅刻なんて・・・・ってあんた、なんて顔してんねん!」
私は小声で言って目を丸くした。
「またなんか拾ったん?」
「後で・・・」
夕実はそう言って青いタートルネックの首の部分を少しめくって私に見せた。
 明らかに人の指の形のあざがついていた。

 授業の後、私たちは昼食を取るために学食へ行った。既に混雑し始めていた食堂で窓際に空いている4人がけのテーブルを見つけるとそこに座った。
「どうしたの?!」
「なんか、よくわからないんだけど・・・」
夕実は辛そうに口を開いた。
「昨日、夜に金縛りに遭ったの。最初はまたか、なんて思ってやり過ごそうってじっとしてたんだけど。ほら、あっちゃんにもらった数珠もあるし、あれもらってからちょっとした金縛りなんて気にしないでそのまま寝ちゃったり出来てたし・・・。でも昨日のはね、ちょっと違ってて・・・」
「?」
「あ、先食べてね、私は要らないから。食べたくないの」
「いいよ、それで?」
「で、こう、上を向いたまま金縛りに遭ってね、なかなか解けないなぁと思って、ちょっと目を開けてみたら、天井から手が出て来てね、首を絞められた・・・」
夕実は大きくため息をついた。
「それで、気を失って気付いたら朝になってんた。夢だったのかなとも思ったんだけど、鏡を見たらこんなことになってて・・・」
そう言って夕実はもう一度私にそっと首のあざをちらっと見せた。

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