青碧の魔術師(黄昏の神々)
「この侭だと私、国の北に有るレントオール山に住む魔人、トレントの花嫁にされてしまうのです」

「トレントだって!!」


ロイが、素っ頓狂な声を上げて、シュリを見た。

彼は、イシスの膝で丸まって、事の成り行きを、傍観しなければ成らない立場だと言うのに、またもや失態を繰り広げてしまった。

御蔭で、ロイが人語を話す猫だと言う事が、エステルにも知られてしまった。

シュリが、エステルを見ると、少し驚いた顔をしてはいたが、聞かなかった振りをしてくれた。

実は、ロイの事を説明するのは、いささか面倒なのだ。


「兄様。この子お話出来るのですよ。意思の疎通に困りませんわね」


イシスの、のんびりとした的外れな言動が、回りの緊張を解いて行った。


「阿呆……」


シュリの冷たい瞳がロイを睨み付ける。

ロイは、シュリの瞳の冷たさに縮み込んでギュッと目をつぶった。


「駄目です。シュリ様。ロイちゃんを虐め無いで下さい」

「虐めてなんかいない。それに俺の事は、シュリでいい。様なんぞ付けられては、調子が崩れる」

「はい」


イシスは、何だか嬉しそうな表情でにっこりと笑った。


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