恋するシンデレラ
イヤホンを耳にかけ、
昇降口の壁に寄りかかって真夏の熱い太陽から逃げた。
「あれ?
奈々美。」
その声で、私の背中は固まる。
耳に届く曲さえも、わからなくなった。
「おーい。」
全身が優斗に集中する。
あたかも気付いてないかのように、携帯をいじってみた。
「あ、曲聞いてんのか。」
少し近寄った優斗は小さく呟く。
聞こえてるよ。
曲、小さくかけてるんだもん。
・・・お願い。
これ以上近づかないで。
優斗は、私の願いとは裏腹に歩み寄る。
そして、私のイヤホンを片方外した。
「おい、奈々美。」
耳に響く声に体が反応するけど、ばれないように驚いた顔を作って見上げた。
「・・・あれっ。優斗、車?」
「いや、チャリ。
奈々美、車?」
「今日は塾だから。」
「おー、そーか。
頑張れ。」
またいつものように、頭をポンポンと撫でる。
「優斗、なんか変。」
「は?」
「だって、優しい。」
『それは・・・』と、言いかけて詰まった。
袖を捲り上げ直す。
「今日、倒れたし、な。」
風が止み、暑さだけが残った。
「・・・やっぱ、そーなんだ。」
「ん?」
優しい優斗に少しいらつく。
なんで?
どうして?
私に構うの?
優しくするの?
問いかけても、ただ熱い光が照らすだけ。
「優斗は、思わせぶりなんだね。」
涙を零さないように、見られないように。
小さく呟いた。
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