切なさに似て…
目覚めの良かった朝。

雀のさえずりで、パチッと自然に開いた瞳。素晴らしく清々しい気分。

こんな朝は、これまで味わったことがないんじゃないか。って言っても過言ではないはず。


起こした体を、ベッドの上で屈伸なんかして見たりして。

頭の中も、異様にすっきりしていた。


まだ、頭を枕に埋め眠っている信浩を跨いで、浴室の洗面台の前に立つ。

顔にかけたぬるま湯が気持ちいい。


ほーらね、私だってやればできるんだから。

得意顔をする、私の顔が鏡に映る。

その顔は浮腫んでもいないし、いつもの寝起きより、断然はっきりしていた。

セットされたコーヒーメーカーから、コポコポと音を出しコーヒーが落とされていく。

狭い部屋中に充満するコーヒーの香りが、不思議と優雅な気分に陥らせた。


後半のゴボッゴボッと、無理っくり吸い出される空気に混ざった水音がなければ、最高なんだけど。


「…ん。…おわっ!!えぇっ!?」

気持ち良さそうに布団に包まれ、丸まっていた信浩が伸び上がったかと思ったら、変な声を上げた。

コーヒーカップを手に持ち床に視線を落とせば、こちらをすごい形相で見上げていた。

「おっはー」

「マジかよっ!?」

そう声を張り、何がマジかよ、なのかわからない私から目線を逸らす。
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