切なさに似て…
例え彼女になったとしても、いつか終わりが来ることを考えると、“友達”の方がマシだなって思えた。

“愛情”より、“友情”はいつまでも続いていく。


[私と信浩の間に“友情”以外の感情を、含有する物質は何一つない]

そう思えば、思う程、楽になれた。仲のいい友達。それだけだから。


信浩が私のことはこれっぽっちも、想っていないのがわかっていたから。

そこに“友情”以外の物が含まれていないと、教えてくれたから。


[私が何かやらかさない限り、暗黙のルールが成り立つ仕組み]

だから、そっと蓋をして閉じ込めて、素知らぬ顔で、“友達”を演じることが出来たんだ。

ねぇ?…こう見えて、私は色々と気を遣っているんだよ。

全面に押し出したら、困るのは信浩でしょ?


近くで聞こえる信浩の寝息が耳の奥に届く。

この寝息がなぜだか落ち着く。


すーっと心の霧が晴れていく。

いつも、起こされてばかりだから明日の朝は、信浩よりも早く起きてやろう。

そして、私が信浩を起こしてやろう。


びっくりさせてやろう…。

…眠気眼でびっくりした信浩の顔が見たいから。


今のままで良かった。

友達のままで良かった。


…そう、思っていたいから。
< 99 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop