切なさに似て…
来月、さっちゃんは新居に引っ越しが決まっていて、付き合っている彼氏と一緒に住む。

言わば同棲なんだけど、今年の冬に結婚も決まっていた。

要は本人は現在幸せ絶頂で、その幸せを分け与えたいのか、はたまた得意げに自慢したいだけなのか。


どうやら、彼氏を作ろうとしない私にお節介をしたいらしい。


「でも、勿体ないよー。柚ちゃんが独り身なんてさ。何で作らないの?仕事柄柚ちゃんは男の人に囲まれてるし頼もしいからかね。男なんてやっぱり頼りがいがないから?そうだよねー」

せっかく話しを逸らしたのに、またしても私に問い掛ける。

確かに…。

会社には、機械を整備したり、資材を運んだりなんてしているのは男ばかり。

だからと言って、頼りがいがないなんて思ったことはこれっぽっちもない上に、自分のことを頼もしいなんて思ったこともない。


「…そういうわけじゃないけど」

否定するのが面倒で、私は言葉を濁した。


「うちの彼氏に聞いてあげるよ!!友達でも紹介して貰えばいいよ。彼氏箱トラ乗ってるしさ、同じ会社の人とか誰かいるしょ。柚ちゃんも早くいい人見つけなよ」

その満足気なさっちゃんの顔に、私は苛々が募る。


自分はいい人と一緒になります。

その彼氏から、誰か適当に紹介して貰って早く幸せになろうよ。

とでも言っているかの様な言い回しに聞こえた。


もっぱらそんなのお断りだ。

誰かに紹介されてまで、みんなが口を揃えて言う“結婚”イコール“幸せ”なんて、知りたくもない。

そんなことで見つけた、よくわかりもしない“幸せ”なんていらない。
< 11 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop