切なさに似て…
食後のデザートも堪能して、ここに来て4杯目のエスプレッソを飲み干した私は、テーブルの隅に置かれた伝票を取った。


「そろそろ帰ろっか?明日も仕事だからね」

一方的にこの場を切り上げようとする私を見上げたさっちゃんは、腕時計に目線を落とす。


「もうこんな時間?今日もたくさん喋ったよねー!久々に柚ちゃんに会えて楽しかったー!!」

そう言いながら立ち上がりコートを羽織る。

どう見たって、一人で話して勝手に笑ってたと思う。

私はいい加減な相槌打って、適当に意見を述べただけ。


それでも、たくさん喋って楽しかったと言えるのは幸せな証拠。

…彼女のこういうところは、純粋なんだけどね。

ただ、自分の思いを他人に押し付けさえしなきゃ…。

きっと…。私はいいお友達を完璧に演じられたと思うよ。


さっちゃんに続いて立ち上がり、肌触り抜群のベージュのファージャケを羽織る。

「いいなー、こういうの!!スカートもかわいーっ。柚ちゃんってオシャレだよね。ほんと背高いし羨ましいっ!」


私の頭一つ分、身長が低いさっちゃんはいつも、私の165㎝ある身長を羨ましがった。

私からすれば背が低い方が、かわいらしいイメージがあって、いいなぁって感じるんだけど。
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