切なさに似て…
その1年後。あの人が“お母さん”としてやって来た。

あの人は、お父さんの長年の浮気相手。手っ取り早く言うと、“愛人”だった。


レナは正真正銘、お父さんとあの人の子供で、私とは腹違いのれっきとした妹。

それを知ったのは、レナに接するお父さんの態度が、まるっきり私のとは別物だったから。


『よろしくね』と、手を差し伸ばされた時の、あの人の勝ち誇った顔が、脳裏に焼き付いて今も忘れることが出来ない。



薄気味悪い笑みを浮かべる女の人を、いきなり“お母さん”とは呼べなくて。

オバサンと言ったら、お父さんには見えないようにして、キッと目を吊り上げ怖い顔をした。


あまりにもその顔がおっかなかったから、私は口を閉ざすようになった。

よっぽど、私の存在が邪魔で気に入らなかったのか。

お父さんのいないところでよくいたぶられていた。


『何よ黙り込んで。何なのよその顔は。憎たらしいわね』

『何か喋ればいいのに、ほーんと可愛くない子だわ』

『それとも自閉症にでもなったの』

『喋れって言ってんの』


タバコを咥えたまま、顎を押さえつけられた。タバコの煙が目に入り込み、顎と目が痛いのをグッと我慢する。

口を開けろと罵声を浴びせられても、唇をギュッと固く閉じた私の口は開くことはなかった。


それが、虐めなのか。虐待なのかなんてことは、私にとってどうでもよかった。



子供心にも、ただただ、憎かった。


この女さえいなければ、お父さんとお母さんは“離婚”しなくて済んだのに。お母さんは出て行かなくて済んだのに。


あの人に対する感情は、憎しみしかなかった。
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