切なさに似て…
目線を窓に戻すと、軽さを取り戻した髪の間からは、変わらず眉を下げ、何とも情けない表情が伺えた。

今日も貯金箱に500円玉が落とされたのを、信浩は黙って眺めていた。


残りのカシスオレンジを一気飲みし、グラスを空にした。

「さっ。もう寝よーっと」

敷かれた布団に寝そべり、掛け布団に包まった。



「…おやすみー」

そう言った私の声が上擦ったのは、信浩のやり切れないような視線に追いかけられたから。


布団を頭まですっぽり覆いかぶさり、息を潜めた。


私はこれ以上、信浩に手をかけて貰ったり、優しくされたら。

また勘違いしちゃいそうだよ。


放って置いてくれれば、期待なんてしないのに…。

なのに信浩は許してくれないよね、いつだって。


まるで、私から離れられないことを知っているみたい…。


窓を打ち付ける雪の音色が、私の胸をざわつかせた。

ドキドキ、なんて生易しい音じゃなく。

ドクンッ、ドクンッ。

胸の壁一面を打ち付ける音は、外でのたうちまわる白い塊が窓や外壁に打ち付ける音に、似ていた。
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