切なさに似て…
あぁ…、だから…。

私に見せ付けるみたいにして、お前の気持ちには応えてやれないって意味で。

手なんか繋いで、私の前を歩いてたのかな…。


あの頃に戻れたら…。

解けもせずのしかかる重たい雪で、閉じた蓋をこじ開けてやると思うよ。

そうしたら、今みたいな“友情”は続かなかった。


どっちが良かったかなんて、私に聞かないでよ。


『あの頃に戻りたいとか思わねーか?』

優しい口調で、そんなこと聞かないでよ。


あの頃に戻って、好きって言う代わりに、信浩を失うってわかってるのに。今、私は信浩とこうして一緒にいることなかったかもしれないのに?


戻れたからって、結局何も言えやしないで。

雪の中に消えゆく2人の影を、泣くこともできないで見てなきゃいけないわけ?


早く大人になりたいと願っていたのに、いざ“大人”ってヤツを体験してみれば。

あの頃よりも、更に捕われて。足枷まで付けられて。


全然抜け出せない…。

いつしか、私は信浩の目を真っ直ぐ見れなくなった。

全てを見透かされているみたいで、言わずとしてもわかっている。と、あの目が語りかけてくるみたいで、怖かった。


知られたくないことまで、知られているんじゃないかって。

気づいたら、私は肝心なことが言えなくなっていた。
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