切なさに似て…
「おいっ!!…起きろって!!柚果っ」

「…もうちょっと」

私を揺さぶる信浩の腕を振り払い、布団を引っ張り頭を隠す。


「昨日の勢いはどーしたんだよ」

見えはしなくとも、信浩の呆れ顔が頭に浮かぶ。

コーヒーメーカーのコポコポと立てる音に調和して、吐いた息を小さく零したのが聞こえた。


「昨日は昨日…、今日は今日。明日は明日…」


目を開くことが出来ないでいる私の頼りない呟きに、今度は大きく溜め息を漏らした。

「わかったような口聞きやがってっ」

引っぺがされた布団に、外気の肌寒い空気が一気に押し寄せる。


「エッチっ…。いくら魅力的な体してるとは言えやめてよね…」

「だーからっ、発情しねぇつーの!!何処が魅力的なんだよ、んな丸まってるくせに。全然そそらないから安心しろ」

薄目を開けると、片手を腰に当て顰めた顔をこちらに下ろしていた。


「寒いっ…」

閉じた目の上に、皺を作り縮こまる私に。動けば暖まるだの、早く支度しろだのと野次が飛ばされた。


しょうがなく起こした体は、瞼を擦りながらヨロヨロと、手探り状態でお風呂場まで足を運ばせる。
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