切なさに似て…
「あのさ…。付き合ってるんだけど、好きじゃないっていうか…。愛してもいない相手に、愛してるって言える？」

私はそこまで言い切って、ロッカーの扉を閉めた。


ガタンッ。

鈍い音が耳に届き、馬鹿げたことを口走ってしまったなと、思いつつも訂正はしなかった。


「え？それってー、気がない人にってことですかー？」

「うん。…まぁ、そうだね」

「あはっ。言えますよー。言うのはタダですからねー。何でもありですよー」

白崎さんは、そんなことは簡単だと言わんばかりにそう言い、ニッコリと唇の線に弧を描く。


それを見て、予期していた答えに心の中で大きく頷いた。


「思ってないことでも言えちゃいますよー。それでー、自分の欲望が満たされるならなんでもありですからねー」

「ははっ。うん、そうだよね…」

と、私の力ない笑いが響く。



欲望…。

誰もが持ち合わせている願望の一つ。

その欲があるから、手に入れたいと思う。

欲しくて充足したいと望む。


例え、誰かが傷ついたとしても手に入れたいもの…。
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