切なさに似て…
「立花さーん。そういえばー、3年前に何かあったんですかー?みんなに気をつけてって言われるんですけど」

鏡を覗き込む彼女の唇が、なんなんですかー?と、動いた。


「…あぁ。うん、あんまり詳しく知らないし、私が言うことじゃないかな?」

私は何て言えばいいか困惑してしまい、言葉を濁す。


「え~、なんか意味深ーっ!!余計気になりますよー、教えてくださーい」

ロッカーにかけられた小さなミラーに映る私の表情は、益々難しい顔になっていた。


3年前の出来事。彼女は軽い気持ちで聞いてきたけれど、明るい話題ではないし、この話題を社内で口にする社員は1人もいない。


あんなことがあったから、澤田さんが赴任して来て。

あんなことがあったから、社内恋愛禁止なんて、これみよがしに事務所に貼られた。


当人同士の問題で、済まされる問題ではなくなったから。

上のお偉方が血相抱えて、早急に対処するはめになった。

3年前の…、冬。
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