切なさに似て…
私は心の中で呟き、主のいないテリトリーに侵入した。


薄暗い部屋に明かりをつけ、ストーブのスイッチを押し、敷きっぱなしの布団を畳み隅に押しやる。

物が乱雑に置かれたテーブルの上を片付け、昨晩からそのままにしてあった土鍋を洗い、夕飯の準備に取り掛かる。

下ごしらえを済ませ、さっさとシャワーを浴びる。


この一連の流れが、彼氏の帰りを待つ彼女みたいで、夢から覚めた朝に、なーんだ夢か。と、がっかりしたそんな気分。


3年前の自分に戻ったみたいで不快感が増してくる。


布団を退かした下のグレーのカーペットに、あの時に零したコーヒーの染みが、未だにうっすら残っている。

カップはしっかり指に挟んでいたのに、尋常じゃないくらい奮えた指先。

感情には嘘を塗りたてられるのに、神経は正直過ぎて対処が見つからない。


涙の一滴すら流れない瞳に、本当に愛してたのかと投げかけてみたけれど、あんたこそ愛してたのかと。反対に聞き返された気がした。
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