切なさに似て…
あの日も、信浩は終始無言で私の腕を無理矢理引っ張り、この海へと連れられてきた。


外に出るんでもなく、黙り込む信浩の横顔すら見れなかった。

ラジオや音楽も止めて、車内には車のエンジン音と吹き荒れる風の音に、雪が打ち付ける音。

時折、聞こえてくる生唾を飲む音に、ジッポのカチンッという金属音。

タバコを吸う様子は、吸いたいわけでもなく、でも吸わずにはいられないといった、義務的に見えた。


手を組んだり手の平を合わせてみたり、指先が落ち着かない。呼吸をしてもいいのかどうか、わからなくなった私が息を潜めた時。


視界の右側で、息を吸い込み口が開いたのが見えた。

『…なぁ?…そんなにあの死んだ奴が好きだったのか?』

降りかかった言葉に、私の瞼が四方に開く。


眉毛が上がり、目を見開いた。

『…なんのこと?』

精一杯の白を突き通す私に、信浩は鼻を鳴らした。

『…とぼけんな。んなの、言わなくてもわかるから。伊達にお前と友達やってないつーの。なめんな』


ほらね、信浩はそうやって。

何でもお見通しみたいに言う。

私のことなら何だって、知り尽くしてるみたいに言う。
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