切なさに似て…
「さみーよっ」

停めてある車の場所まで戻ると、信浩はそう肩を竦ませ、指の間に挟んでいたタバコを口に咥えた。

宙に浮いたタバコの火が、オレンジの光りをチカッと輝かす。


「…外にいるからじゃん」

皮肉が込められた私の一言に、すかさず信浩が口を開く。


「外で吸いたい気分なんだよ」

「何それ、意味わかんない」

「柚果こそ。冷え症なくせに」

「私は…、外にいたい気分だったんだよ」

一瞬、言葉を詰まらせ、そう言い返す。


「じゃあ、俺と同じじゃねーかよ」

「…どこが?」

「せっかく来たんだから、せめて潮風に当たりてーだろ」

信浩はそう言って、ドアを開け車に乗り込んだから、私も助手席に回り車に乗ることにした。


「潮風…、強過ぎだからっ」

タバコの火を消した信浩に不満そうに言うと、目許を緩ませこう言った。


「なかなか、粋だろ?」

「粋って、何が?」

笑いながら言うから、私も笑って言い返した。


うん。まだ平気。笑っていられる。

私は笑みを零しながらも、そう頭の中で再確認した。
< 174 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop