切なさに似て…
「何がだよ」

と、私の前にカシスオレンジが入ったグラスを置き、していた呆れ顔を綻ばせた。


「どうやればこんなにご飯がパラパラになるわけ?どうして私が作るとベチャーっとなるの?」

そう言いながら、パラっとしたチャーハンをレンゲで崩し掬い上げる。


信浩の作ったチャーハンは時間が経っていてもパラパラとしていて、口に入れれば鳥ガラの素と醤油の味がマッチしていて香ばしさが広がる。

私の好きな信浩のチャーハン。他の料理は対したことないけどチャーハンだけは美味しい。


一弥みたいに料理は得意ではないし、ビーフシチューなんて洒落たもの作っことないし。得意料理はチャーハンだし…。


一弥のビーフシチューが一番好きだなんて言っていたけれど。

本当は私の一番好きな食べ物は、信浩が作るチャーハンだった。

信浩は一弥みたいに『美味しい?』なんて絶対に聞かない。

そう聞けば、美味しいと言うしかないのがわかっている。強制的に言わしてるみたいだって前に話していたから。


「美味しーっ!」

だから私は、自分から言う。
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