切なさに似て…
「あっそ」

なんて信浩は素っ気ないけど、私が本当に美味しいと感じているのはわかっているんだ。


「パラパラにならないのは火加減じゃねーの?強火でさ、フライパンの中で転がして、さっと炒めればパラってなるぞ」

さらっと、当然のように言いのける。


「チャーハンって奥が深いね」

「お前が難しく考え過ぎるんだよ。どうせ作る気ないだろ」

「うん。チャーハンは信浩担当だからね」

「じゃあ、お前は何担当なんだよ」

そう言って、顔を斜めに上げる。


「味見担当」

そりゃそうでしょ。さも当たり前かのように私は答えた。


「あーそうかよ」

そうだろうな。と、納得したと言わんばかりの呆れ顔をし、食べ終わった私を見てタバコに火をつける。


そんな冗談に付き合ってくれているだけで、本気で呆れているわけじゃない。

チャーハン以外は私がほとんど作っていた。


食べ終わったお皿を片付けついでに、フライパンに残ったチャーハンを盛りラップをかけた。
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