切なさに似て…
揺さ振っていた足の動きが止まり、今度は私の方眉が上がる番だった。

「で?って?」

主語がない信浩の問い掛けに、眉を顰め聞き返す。


「だから、その彼氏の友達だかって奴に会うの?」

静かにそう言うと、タバコをくわえた。


タバコを吸う信浩の横顔は、さっきまでの笑顔が消えていて。

何か、変なこと言ったっけ?

と、今の会話を辿ってみても、特におかしな点はないように見受けられる。

「わかんない」

色々な意味を込め、首を傾げた。

「ふーん」

そう呟いた信浩の険しい横顔から、短くなったタバコを灰皿の底へと押し付ける手へと視線を移す。


多分、私の眉は中心へと寄せられているだろう。

今晩2度目の、興味なさげの『ふーん』に、返す言葉が見つからない。


急に真面目な顔つきになった信浩もわからないし。

会うの?なんて聞いてくること自体、意味がわからない。今まで、そんなこと聞かれたことなかった。

会うか会わないかと問われてもわからない。

会う気はないにしろ、さっちゃんにしつこく誘われれば会うかも知れない。
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