切なさに似て…
天を見上げれば、黒い雲の隙間から覗く月明かり。

肝心の月は暗雲に隠れ潜んでいて、まるで自分を見ているみたい。


赤茶色をしたマンションの裏手から、最上階の一番奥の部屋を見上げる。


明かりはついていなかった。

いくら遮光カーテンとはいえ、あまりにも窓の向こうは真っ暗過ぎる。

こんな確認作業なんかしなくたって、歴然としていたはずだ。


『明日も仕事終わんの遅いのかよ?』

そう聞かれ、明日も迎えに来てくれるのかなって、確かに思った。


頭のどこかで、迎えに来てくれるって信じちゃってたのかな。彼氏でもないのにね。

会社から出た先の表通りに、停車している車が見当たらなくて、悲しくなった。

私が部屋に着いたって、主はきっといないだろう。と、予想できる。


決定打が打たれたのは信浩が借りている駐車場に、車がなかったから。


…帰って来てない。


その事実が、何だろう…。いやに…、ショック。と、言えばいいのだろうか。

私はここに帰って来て、良かったのかな…。
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