切なさに似て…
まだそんなに日にちが経っていないのに、彼女は結城さんを一弥って名前で呼んだ。


「…そっか。辞めたって聞いて、正直ムカついたけど。でも…、仲良くやってんだ?良かったね」

最後の台詞は皮肉なんかじゃなく、本当に良かったって思ったから。


「はい、すでに一緒に住んでるんですよー」

時間あるなら少し話しましょうよー。と、白崎さんからの珍しい申し出に、場所を移動する。

事務所脇に設置されてある自販機。彼女は小銭を入れ、ガゴンッと鈍い音と共にホットコーヒーの缶が2本落ちてきた。


「いただきまーす」

差し出された熱々の缶コーヒーを手で包み摩る。

冷えた指先がジンジンと、痛みにも似たような感覚で熱くなる。

私達は冷たい風を遮るため、会社の裏手に回り無造作に置かれたコンクリートブロックに腰をかけた。


「…あたし、知ってましたよ。一弥と立花さんが付き合ってたの」


彼女は静かに、そしてさりげなく言ったあと。ああー、暖かい。と、両手の中の缶コーヒーに口をつけた。
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