切なさに似て…
「…治も麻矢も、奥さんと旦那さん置いて、こんなとこ来てていいわけ?」

「唯一、高校ん頃に戻れる日なんだから、いいんだよ」

またもや、手をヒラヒラさせる治と、そうそうと同意する麻矢に連れられ、見下ろすビルの入口に吸い寄せられる。


本人らがいいって言うのだからいいのだろうけど、家庭を持つ2人の姿は昔とは大きく変わっていた。


『あの頃に戻りたいとか思わねーか?』

信浩に賛同したけれど。…戻って何がしたいわけじゃない。

それでも、戻りたいと願うのは…。


みんなと違って、淡々と時間だけが過ぎて行くからなんだろうな…。


エレベーターの箱に入りボタンを押す治の左手と、私の右手に当たる麻矢の左手にはめられた銀色の指輪。


それまでは、変わらず信浩のマンションで笑いこけていた私達4人。

卒業から1年も経たない頃、2人が同じ時期に結婚してから、パッタリ私からコンタクトを取ることをやめた。


それは信浩に、冬の海へ連れて行かれた後だったから。


あの時私は、治と麻矢にはできることなら知られたくなかったし、会いたくもなかったんだ。
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