切なさに似て…
「はーい。っても、すぐ22だよ?」

口に含んだカシスオレンジは、なんとも言えない甘酸っぱい香りが充満した。


「ま、確かにあと4ヶ月で22だよな…」

「今年はどうしよっか?」

「トリタロウ」

ボソッとわかり切ったかのように呟いた。

「はいはい。了解しました」

と、何度か頷いて見せる。


信浩の誕生日は7月18日。

私の誕生日は7月25日。

丸1週間違い。


どちらが決めたんでもなく、2人で行きつけの焼き鳥屋、[トリタロウ]で祝うのが毎年の行事。

信浩は携帯の画面を見て口を開けた。


「25日って…、おっ、土曜日じゃん!今年は25日で決まり、な?」

そう言い、開いた携帯を折り畳む。


「やったっ。もろに誕生日だ。今年の誕プレは何がいいかなぁ。去年がネックレスチェーンでしょ、一昨年が携帯ストラップ…」

携帯を持ち、付けられたストラップをわざと揺らす。

「んじゃ、今年は香水だな。はい、決まり」

「香水!?私、男物付けないよ?」

「いいじゃん女物で?」

なんて言って、テーブルの上に無造作に置かれたタバコを1本取り火を点けた。
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