切なさに似て…
「信浩が女物つけんの!?」

「駄目かよ?」

好奇の目を向けた私を見る、ちょっぴり不満そうな信浩の顔。

「いや…、いいけど」

いつも同じものしかつけないのに、意外。という、出かかった言葉を喉の奥にしまい込んだ。


決まってお互いのプレゼントは2人で買いに行くことになっている。

同じ物を2つ揃えて、いわゆるお揃いにしていた。

去年のネックレスチェーンも、一昨年の携帯ストラップも。その前の年は、タバコを吸わない私には役目を成さないジッポも。

全部お揃い。

何でかわからないけれど、いつしかそう決まりが出来ていた。

今年は香水かぁ…。


「女物はよくわからんから、よろしく」

信浩は私に丸投げを決め込み、白い煙りを吐き出した。


自分から言い出しておいて、要はリサーチしろよ。と言っているわけだ。

ヴィヴィアンのレットイットロックって男物なんだっけ?どうだったっけ?


「うぅ…。疎いからなぁ、そういうの」

「あぁ。そういやお前ほんと、流行に人より遅れて乗っかってるよな?」

そう言い終わると、タバコを灰皿に押し付け、私は残り少ないグラスの中身を空にした。


「今時じゃないと?」

「自分のことよくわかってんじゃん」

缶の奥に残っていたビールを飲み干し、「よし、もう寝るぞ」と、立ち上がる。
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