切なさに似て…
治の横顔と普通の白い紙を交互に見て、タンブラーグラスに伸ばした手を引っ込める。


「…見て…、いいの…?」

少し遠慮がちに私は口に出した。

「いいけど…。信浩には口止めされてたんだよな」

と。タバコと、半透明色のドリンクを順番に口にする治。


…口止め?小さく呟くように聞いた私に、今度は麻矢が口を開く。


「実はさ、金曜日の夜。わたしら飲んでたんだよね。そうしたら、信浩から治に連絡来たわけよ。んでまあ、合流したんだけどさ」

そう言った切り、麻矢はブルームーンとやらの名前のカクテルを堪能し始め、その続きを言おうとはしない。


心の準備ができて、身構えている私の眉が寄るばかり。

視線を預けたお酒を嗜む治と麻矢の、その様子に苛立たしさを感じるも、じっと待ち続けるしかなかった。


続きを急かすように、取り乱すなんて。それじゃあ、まるで、私は信浩が好きだ。と、自分から暴露しているようで、それだけはしたくなかった。


しばらく続いた沈黙はほんの数分なのに、何十分も長く感じられ、黒光りした灰皿にタバコのフィルターを押し当てた治の指は、正方形の白い紙をヒラッと裏返す。
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