切なさに似て…
「ここに書いてある場所は今、信浩が住んでるであろうマンションで。あいつは月曜日付けでここに転勤。2月頭には決まってたらしいんだ。多分、3年くらい戻れないって」

紙に書かれた住所をトントンと指で叩き、そう言い放った治はふぅーと息を吐いた。


…転勤…?

と、言葉が漏れた私は、紙に視線を落とし、より一層眉を歪ませた。

九州地方の地名が書かれた住所。


月曜日付けで転勤…。

3年くらいは戻れない…。


その言葉が頭の中を目まぐるしく駆け巡る。


九州へ転勤したのはわかったし、3年間は戻らないのもわかった。

私が知りたいのは、それももちろんのこと。そうじゃなくて、単に転勤なら。

黙って出て行くこと…、ないのに…。

それも、2ヶ月も前に決まっていたなら…、尚更じゃない…?


益々深まる信浩の言動に私は意味がわからず、呆然と紙を何度も目で追っていた。


暖房が行き届いたバーの店内、出されてから口のつけられていない2杯目のカシスオレンジはカシスの赤とオレンジの黄色がグラデーションを描き出し、グラスには無数の水滴が付着している。

カランッ、溶けた氷がグラスの中で音を立てた。
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