切なさに似て…
この一言を言葉にするのに、どれだけの時間が費やされて。どれだけの勇気を振り絞ったのか…。

「…す…っ、き……、だよ」

か細く、不安げに私のカラカラに渇いた口から零れた言葉を聞いた2人は、物ともせず大胆にも笑い飛ばす。


「バーカ。知ってるよ」

そう言われて私の声は、うっ…。と詰まり、私の頭の中では白紙の紙にペンで、幾重にもぐにゃぐにゃと書きなぐったような物が浮かび出た。


「気付かないのは、あのバカだけだ」

「言えてるっ!!」

何がおかしいのか、バカ笑いする治と麻矢。


ちっとも可笑しくないしっ!

人が…、やっとの思いで本心を口にすることが出来たっていうのに…っ。

…笑うとこ!?


こんなことなら言わなきゃよかった…。


氷が溶けて薄まったカシスオレンジを、一気に喉の奥へと流し入れる。

グラスの上層部はほとんど、氷が固体から液体に変わり味気なく、カシスの迫力もオレンジの存在も消えていた。
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