切なさに似て…
「あいつは3年後、俺のこと覚えてねーんじゃねーか。忘れっぽいし、ただのダチだし。…3年か…、長いよなー。3年ってどのくらいだ?
って、信浩が言ってたぜ」


…へ?


変わらずぼそぼそと呟かれた言葉達に、私は治の顔を凝視した。治は顰めた顔をこちらに向けて。


「信浩。結構、酔っ払ってたからさ、よくわからんけど。柚果、柚果ってそればっかし。女々しい奴だなほんと」

思い出したかのように笑いを漏らし、開いた唇の間からふうーっ。と、旨いと言わんばかりに煙を出す。


「あれは酷いね。ベロンベロンだったよねーっ。そこらにいる酔っ払いオヤジみたいでさ。どうしよう、どうしようって喚いてた」

麻矢が口を挟み、ニシシッと不気味な笑い声を上げる。


2人の放った不確実な言葉に蟠る不信感は、尾を引いてまだ続く。


「好きなんだな、お前のことが」

と、ストレート直球で言われてしまい、どう返していいのか戸惑っていると。


「俺はあんな取り乱した信浩、初めて見たぞ」

ふふぁっと、治はまた思い出し笑いを零した。
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