切なさに似て…
「信浩に会ったら番号くらい教えろって伝えといてくれよ」

「あとね、4年前に貸した千円早く返せって言っといて」

「麻矢、お前な。そんな千円なんてどうでもいいから」

「どうでもよくないよ!大事だからねっ」

話しの輪から私を追いやり、2人は立ち止まったまま口論を繰り広げる。


「まっ、待った!ちょっと、今のどういう意味?」

治と麻矢の前に立ちはだかり、2人の腕をわしづかむ。


「は?」

「え?」

口の動きを止めた2人は、代わりに方眉をぴくりと動かし、私の顔に視線を預けた。


2人は「何が?」と、言いたげに難しそうな表情を見せる。

「今の…、伝えろとか言っといてとか…。どういう意味!?」

「そのまんまでしょ」

「会いに行くんだろ?」

その2つの顔は今にも、何言ってんの?と、言ってしまいそうな、不思議そうな顔を見合わせる。


「当然行くだろ。その場所に」

と、治が指で示したのは私の手の中に握られた白い紙。
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