切なさに似て…
2人に追い付くと、彼らは信号待ちをして交通法規をしっかり守っていた。


律儀な治と麻矢の後部から私は声をかける。

「治も麻矢も帰っていいよっ。私一人で十分だから。奥さんと旦那さん待ってんでしょ?」

「そんなこと言ってる場合かよ。万が一を想定して、俺がいた方がいいだろ」


俺は一応男だから。って、茶目っ気に笑うと、治は自分の顔を指す。

「あ~っ、もうっ。急いでるってのに信号長過ぎっ!!」

点字ブロックの上で地団駄を踏む麻矢は、私の話しなんて聞いちゃいなかった。

どうやら2人共、引き下がる気はないらしい。


歩行者信号が赤から青へと変わり、駆け出す麻矢の後ろ姿。

「こういう時くらい頼れよ」

私に背を見せた治がそう言って軽やかに歩き始める。


…そうだった。この2人は昔から正義感たっぷりで、絡まれてる人とか放って置けないタイプだったっけ…。

横断歩道手前で残された私は肩全体で深呼吸をし、出遅れた足を踏み出した。
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