切なさに似て…
「うるさいっ、うるさい!やってられるか!」

喚き声を撒き散らし、踵を返したオヤジは背中を見せると、足早に私達の前から立ち去って行く。


面倒臭い対処方のおかげか、あっさりと引き下がったオヤジに私達は拍子抜けして。ポカーンとアホみたいな顔を見合わせた。


「何だ、あのオッサン?」

「気でも触れたんじゃない?あの人、やっぱり妻子持ちでさ。…びびって逃げたのかね?」

「危機一髪ってとこか」

治と麻矢は良かった良かったと、満足げな顔を作り出す。


「何なのよ…、ほっといてくれればいいのに…っ。それで正義の味方でも気取ってるつもり!?」

声を荒げたレナは、「何なのよ…」と、もう一度小さく呟き、頭を下に向け俯いた。


「かっわいくないガキだなっ。さすが柚の妹だな」

「ちょっと、治。何よそれ?どういう意味?」

それまで観客を演じていた私は、投げられた治の一言に眉をひくつかせた。


「そのまんまだけど?かわいくないだろ。あーあ、0時過ぎたな。…終電行っちゃったな」

ジャケットの袖から腕時計を覗き見、時刻を確認した後、私にも見えるようにその腕を出す。
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