切なさに似て…
着替えを取りに家に戻ると、布団を深く被り、息を潜めて泣き続けるレナ。

『お姉ちゃんは自分さえよければいいんだっ!』

あの家に寄り付かなくなった15歳の私に、そう浴びせたレナは8歳になっていた。


レナのお守りも、あの家も。係わり合いたくなくなかった。

こんな子、妹でも何でもない。

冗談じゃない。


そうは思っていても…。


あの頃、レナが好きだった51円のお菓子を、ただ泣き止ます為に買ってあげた。

でも、レナは笑って『はい』と不器用に半分に割って、私に差し出した。

それに一口かぶりつくと、レナは『おいしー?』って、泣いていたくせに嬉しそうに笑って、私の手に小さな手を重ねた。



…そうは思っていても、私はあんたにいつだって救われていたから。

あんたのことは気掛かりで、3日分の着替えを取りに通うことくらいしか、私には出来なかった。

あんたが行きたがっていた幼稚園、10歳だった私には行かしてあげられなかった。

お菓子くらいしか、買ってあげることができなかった。


あの頃は幼稚園に行きたいと言って泣いていて。今は高校に行けないって泣いている。

あの頃と何も、変わってないじゃん…。
< 288 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop