切なさに似て…
「でね?電話したのはその話しじゃなくて。…明日って時間ある?」

[あるよ?何?]


「ん、お金渡すからある物を買って来てもらいたくて。帰り遅いのがしばらく続きそうで、自分じゃ行けないから。頼めるの麻矢くらいしかいなくて…」

ずっと、音信不通だったくせに都合のいい話だと、自分でも思う。


[いいけど、何?]

「…お金渡すのに帰り、寄るから」

[それなら、今日の方がいいんじゃない?柚、駅で待ってな。今、旦那降ろしたところだから。すぐ行くから]

事情を聞いた麻矢は、朝晩、旦那さんの送迎をしてんの。そう言うと電話を切ってしまった。


治といい、麻矢といい。途中で話しを終わらすのが得意なんだろうか…?


足を休め、通話時間が表示された携帯電話を唖然と見つめた。

やれやれと、溜め息にも似た息を吐き、目に入ったコンビニの自動ドアを潜る。

真っ先に銀行ATMの機械の前に歩み寄り、キャッシュカードをカード挿入口へと滑らせ、4桁の番号をタッチする。

出てきたお金を財布へとしまい込み、他に用がないコンビニを後にした。
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