切なさに似て…
通用口を抜け更衣室へと足を入れた時、今日が火曜日だと思い起こす。

つまり、火曜日はお局様が留守の日だった。


なんだ…、いないのか。

心の中でがっかりしたのは、昨日待ち構えていた白崎さんの言葉を伝えたかったのもあった。

「ま、明日でもいっか…」


白崎さんがいなければお局様もいない事務所は、静かに時間が流れて行った。

これを平和と呼ぶのだろうか。


昨日までは抜け殻状態の悩内は非常にすっきりしていて、溜まる一方の書類の山を片付け勤しむことが出来た。

そっか、もう4月か…。


九州って…、もう桜、咲いてるのかな。暖かいんだろうな。

…元気、なのかな…。


手を休め、机の上の卓上カレンダーに視線をずらし、ふと信浩のことが頭の片隅に浮かぶ。


「…仕事、仕事」

パンパンッと、両頬を手の平で叩きパソコン画面へと目の動きを集中させた。
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