切なさに似て…
そう言われてみると、テレビなんてものはあの家で見たことがなく。常時、電気が停められるあの家にあったのは見れるのだかわからないテレビ。

私はもちろんのこと、信浩も情報を取り入れる手段は雑誌、もしくは携帯という習性で、この部屋でもテレビを見る習慣はなかった。

カラーの画面に目を奪われたレナはテレビに首ったけで、もう質問攻めに合うことはなさそうだと安堵する。


自分の話しをするのも、説明するのも苦手。

避けてきたからか余計にどうしていいのか、どう話せばいいのかわからない。

白崎さんにあんなに自分のことをぺらぺら喋ったのだって、何かの間違いないじゃないかとさえ思っている。


「電気消すよ?」

紐を手繰り引き、カチッと明かりが消える。つけっぱなしのテレビは目まぐるしく明暗が移り変わる。

光がチカチカとちらつき、眩しさで枕に顔を埋めた。


「お姉ちゃん、…ありがとう」

ボリュームが下げられ微かに耳に届く音声に混じり、レナの声が聞こえた。
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