切なさに似て…

「とりあえず結城くん、戻っていいわよ」

結城さんに向き直った澤田さんは若干冷たい口調で言うと、彼は一瞬驚いた表情を見せる。


「失礼します」

深々と下げた顔を上げ、逃げるように事務所を後にした。


靡く結城さんの髪を目で追いかけた私に、またもや澤田さんの声が振りかかり、ビクッと肩が上がる。

「書類は出来たのね？これなら一人でも大丈夫そうね」

はい。と言いかけた私に、そう紡がれた言葉をどう解釈してみても、それは、つまり…。


「新しく人を入れる必要はなさそうね」

出かかった言葉を飲み込み、目許を綻ばす澤田さんに、やっぱりそうきたか…、と。私は何も反論は出来なかった。


「採用したって、白崎さんみたいに辞めるなら必要ないわ。あなたは大丈夫よね？」

肩を落とし軽く息を吐き、ジロッと流し目をされては素直に、はい。そう答えるしかない。


「これからもご指導の程、お願いします」

そう付け加え頭なんて下げて、張り切って残業なんかしなければ良かったな。と、後悔の２文字が頭を駆け回る。