切なさに似て…
澤田さんに、白崎さんが言っていた『澤田さんってなんか好きですよ』、その一言を伝えると。

案の定、「馬鹿なこと言ってないで手を動かしてちょうだい」と、ピシャリと言い返されてしまった。

でも、その横顔は朗らかで緩んでいるように見えた。そして、再び頭を持ち上げ口を動かす。


「“整理整頓”、なかなかいいわね？色々なことが整理整頓できればいいけれど、そうもいかないことばかり。
知らなかったとはいえ、奥さんにどう償えばいいか…。考えても答えは出なかったわ。死のうとしたけれど結局死に切れなくて。
申し訳ないという言葉は意味を成さない、全てが言い訳の塊でしかないでしょう。モラルに欠けるわよね。
人はどうして他人の所有物を欲しがるのかしらね」

羨ましいからかしら。澤田さんは意味深にもそう付け足し、事務所の奥へと引っ込んで行った。


欲したあとには罪悪感しか残らない。

世間体では許されない、支持されない“恋愛”ばかりが取り巻いている。

誰かを傷つけて、最後に残るのは罪の意識だけ。誰も傷つかないようにしていても、誰かが傷ついている。

恋愛禁止と、自らの心の奥底に閉じ込めるしか術はないのだろうと…。
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