切なさに似て…
次の週。

嬉しそうなレナから入学式の報告をされ、信浩と初めて話しをしたのは入学式だったっけ。と、昔を思い出す。


宣告通り、一度様子を見に営業所へ現れた澤田さんは、手を休めた私に「しっかり仕事しなさいよ」と、檄を飛ばした。

毎朝、天野さんに「彼氏と…」なんてからかわれるのも相変わらずで。

結城さんとの会話は、付き合っていた頃より弾み、時折白崎さんのプチ情報が聞けた。

聞いていると、ゆっくりと育んでいるみたいで、私が言えることではないが本当に幸せそうだ。


治と麻矢からはちょくちょく電話やメールが届く。最後には必ず「信浩によろしく」と、嫌味とも取れる言葉が付け足された。


そして、待ちに待ったというべきか、いよいよ来たというべきか。妥当な言葉は見つからない。

福岡へと発つ、土曜日。

朝から荷物の確認に追われ、少ない手荷物を抱え部屋を出る。


「お土産忘れないでね!」

学校が休みのレナは眠気眼を擦りつけながら、玄関先までのそのそと起き出した。


「はいはい」

適当に返事をし、重たい扉を閉めた。
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