切なさに似て…
16時30分には上がらせてもらう交渉をしたというのに、夕方に近づくとお客さんが次から次へと押し寄せ、上がるに上がれない。

つくづくタイミングが悪過ぎる。

17時過ぎの快速に乗れないと完璧、搭乗時刻には間に合わない。


カタカタとパソコンの画面と、壁に掛けられた時計と、何度目かの睨めっこ。

長い針が12の位置、短い針は5の数字へと迫って来る度。溜め息と同時に肩を落とす。


逃げ出すかのように会社を出て、全力疾走しても間に合わないと理解していても、走らずにはいられない。

携帯片手に走りながら、ありとあらゆる時刻表を検索するも、該当する乗り物がなく、諦めて予定通り、地下鉄から列車に乗り換えるしか方法がない。


時計を見ると17時になろうとしていた。時間を確認し、再び地面を蹴り飛ばした時。


ブッブッーッ。と、ホーンが重低音を響かせ、一台の軽自動車が先に停まった。

「柚ちゃーんっ!」

狭苦しい助手席の窓から顔を出し、大声で私の名前を呼ぶのは。ここのところ電話の着信もメールも無視し続けていた相手。さっちゃんだった。
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