切なさに似て…
JRの駅まで10分の間、社内にはさっちゃんのけたたましい話し声しか上がらない。

「帰ってきたら合わせてあげるよ。いい人だからさ。柚ちゃん最近、ウチの日記見てくれてないよね」

お約束でよく喋るさっちゃんに、私は重たく閉じていた口を開いた。


「さっちゃん。私…、好きな人いるから、紹介されても困るんだ。あと、サイト…、退会したの。ごめんね、言ってなくて」

「なんだ、そういうことなら早く言ってくれればいいのに。柚ちゃんでも好きな人いたんだ。だって、そんな風に見えなかったし。なんか意外だね。柚ちゃんって恋なんかしなさそうなイメージだからさ」

と、軽く笑われてしまった。


理解されないとは思ってはいたが、ここまでとは思いもしない。すぐに話しを変えられ、自分の話題に結び付ける。


「ウチの彼氏優しそうに見えるしょ?でも、優柔不断なんだよね。だけど、しっかりはしてるんだよ。あれそういえば、柚ちゃんってタバコ吸わなかったっけ?あっ、吸うのは別の人だったかな。色んな人と会うからこんがらがっちゃうさ」

そう明るく笑うさっちゃんは、[私という人間]に対し、さほど興味がないようだった。
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