切なさに似て…
グラスを持つ手が震えていることに気づかれないように、中身を半分まで減らし喉に潤いを与える。

表面に付着した水滴が膝の上にポタッと落ち、冷たさが伝わる。


何か言ってくれればいいのに、反応が見られない信浩の横顔は歪んでいる。

眉を真ん中に寄せ目を瞑り、頭に手を置いて言いにくそうな、気まずそうなそんな表情。


「柚果。あれさ…、最後に言ったこと。冗談だから。…本気にすんなよ?」

やっと開いた信浩の口から出てきた台詞。閉じたままの瞳からは何も伺うことができない。


最後に言ったこと…。それはこれしか思い浮かばない。

『いつになったら…、俺のこと好きになってくれるんだよ…?』


冗談だから。って…。

本気にすんなよ。って…。


もう今更遅い。本気にしちゃたから、私はここにいるのだから。

やっぱり冗談だったんだ。そう思いながら、どこかでまだ期待しているのは往生際が悪いのか、それとも引き際がわからないからか。


「何それ、ムカつく…」

ポツリと呟くように投げかけていた。


『…こんなに近くにいるのに。何で…、俺じゃないんだよ…っ』

とか言ったくせに…。

こんな冗談、性質悪過ぎ。なーんだ、冗談か~。なんて笑い飛ばせたらいいのに、それすらも出来ないじゃん。


「ほんと…、ムカつく。すっごい寝むれなくて、たくさん考えて…。なのに…、冗談って…。ムカつく…」
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