切なさに似て…
煙草を吸うわけでもなく、ジッポの蓋をカチンと鳴らし火を灯しては、またカチンと金属音を立て蓋を閉める。

何も言わない代わりに、信浩の親指は忙しそうにジッポを鳴らす。


話をするどころか、これじゃああまりに惨めだ。

もはや好きだって伝えることすら叶わない。


「さっきの…」

さっきの人が新しい彼女なのかくらいは聞いたって、そのくらいは教えてくれるだろう。そう思って切り出したところに、信浩の言葉が重なって。


「そういうことにでもしておかなかったら…、キツイだろ」

そう言うと、またジッポがカチンッと弾く音が聞こえた。


…どういう意味? 何がキツイって?

そういうことにでも…、って?意味がわからない。


「…な、何が…?」

真っ直ぐ信浩の顔を食い入るように見つめた。でも信浩の瞳はジッポを捉えて離さない。


私の問いに答えることなく、ジッポの蓋を開けては火を点け、その繰り返し。じっとしてない信浩の親指に視線を移す。


それにしたってムカつくって言ってるのに、キツイって。

冗談だったじゃ済まされないと思ってるのに、そういうことにでもしておかなかったら…、って。

ちゃんと答えてくれないと、わからない。


早く次に出てくる言葉が聞きたくて、早く、早くと私が焦ったってどうしようもない。

無理やり聞いたってどうせ話してくれないし、信浩が話し出すまで、閉じた口が開いてくれるまでじっと待つしかない。
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