切なさに似て…
信浩の指先を見つめていると、手の中で弄んでいたその閉じたジッポをテーブルへと置いた。ガチャッと音がした瞬間。


「どうせフラれるんなら、同じだよな。さっぱりフラれた方が諦めもつく…」

テーブルの上のジッポを見据えたまま、ゆっくりと信浩の口が動いた。


「…え?」

私の開けた口が閉じる隙なく、信浩は置いたばかりのジッポを手に取ると口を動かし続ける。


「何で、来たんだよ? せっかく忘れようって思ってたつーのに。せっかく…、どうせならって一番遠い場所に、転勤の希望届け出したのに。これじゃ、忘れらんねーよ。…帰したくなくなる…」

最後にカチンッと音を鳴らしたジッポに炎が揺らめく。煙草を1本抜き取ると火を点けた。

紫煙に包まれた信浩の顔は、どことなく切なそうで。


その顔は最後の日に見せた表情いよく似ていた。


「…それって、どういうこ、と?」

躊躇いがちな台詞に、チラッとこちらを煙の向こうから覗き見た信浩の視線は、すぐに逸らされて自分の手に目線を落とす。


「言ったじゃん。好きだって」

「それは…。それっ、冗談だって…。今言ってた…」

思わず前のめりになってしまう。距離が置かれた隣に座る信浩に詰め寄った。


私より冷静な信浩は、詰めた距離を戻す。少しだけ私から離れるかのように座り直し、声を発する。

「冗談にしておけば、楽、だからさ。本気でいる方がキツイから」


…何を言っているのだろうか。

一体信浩は何が言いたいのだろうか?
< 352 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop