切なさに似て…
「そんなの全然わからないよ」

「見てりゃわかるだろ?」

「見てたらわかるなら、私の気持ちだってわかって当たり前でしょ?」

「ちっともわかんねーよ」

「じゃあ、私と同じじゃないのよ」

「どこがだよ、一緒にすんじゃねーよ」

髪を掻き毟る信浩は、その手で頭を抱える。


ちょっとした口論で、いつもの私たちの調子に引き戻されていく。

それが妙に心地よくて、嬉しくなる。


「いいよもう、これからわかっていけばいいんだよな?」

前髪の隙間から覗かせた、照れたような瞳で見られてまた恥ずかしくなる。


「…うん」

頷いたのは視線を合わすことができなくて、まともに目を見ていられなかったから。


いざお互いの想いを理解してしまうと、今までみたいな普通には接しられなくなる。

ずっと知っている信浩が、全く知らない信浩みたいな錯覚。

この変な違和感がもどかしくなる。


「ねぇ…?」

「ん?」

顔を上げると目尻を下げ、優しそうな顔をした信浩がいた。


「好きって…、もう一回言って…?」

そう言うと信浩は、ビックリしたかのように眼光が開き、無意味に瞬きを繰り返す。


何やら唸りながら頭を掻き毟り、私の身体を引き寄せたかと思いきや、耳に微かに吐息がかかる。


「柚果、それは甘えてんの?何なの?」

「わかんない。もう一回言って欲しかったのかな?」

「…かな?って、んな可愛い態度取られても困るんだけど?」

「…は?いつも通りだけど?」

「自覚ねーの?どこがだよ…。俺に取っちゃその言葉、結構重たい」


言いたくても言えなかった言葉だから。そんな囁き声が奥に到達したとき。


「好きだ」

低い声が胸の鼓動とシンクロして、身体が離れた瞬間唇がポワっと熱くなる。
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