切なさに似て…
聞いておきながら、緊張が指先にまで走り抜けるような、信浩の腕を掴む手につい力が入る。

「会社の先輩。今日、歓迎会でさ。帰り同じだったし、一緒に帰って来ただけ」

そう言って、また髪をくしゃくしゃにされた。


帰ってきただけ。って、何?


引っかかる節はたくさんあって。

そんなんじゃ納得していないと言わんばかりに、信浩の顔をじーっと見入る。


それが伝わっているかのように、信浩も困ったような表情をちらつかせた。


「友達だって言ってた…。それに、今日は帰ったら一緒に飲もうって、先に帰ってって、どういうこと?」

そう問い質すように、声が不安げになってしまう。


私が斜めに傾げれば、信浩は重たく息を吐き出し口を開いた。

「あの先輩とは同じ営業で、去年仙台からこっちに転勤してきた人。提携してる不動産屋に勧められた物件が、ここだったってわけ。先輩の部屋は6階、…週末はお互い暇してるから、一緒に飲みに行ったりするし、互いの部屋で飲んだりもする」

なんとも言いにくそうに頭をポリポリと掻きながら、ひとつひとつ言葉にしていく。
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